2月特集は「バーボン(Bourbon)」です。スコッチやジャパニーズと比べて、やや情報量が少ないバーボンですが、実は溢れるほどのブランドがリリースされています。今回その数多いブランドの中でも、アメリカ最大規模の家族経営を行っているヘヴン・ヒル社のウイスキーブランドに焦点を当て、彼らのサクセスストーリーも踏まえてバーボンについて楽しんでいきましょう。ぜひ、バーボンの世界へ足を1歩踏み出してみてはいかがですか?
バーボン・ウイスキーの楽しみ方
2月特集は「バーボン(Bourbon)」です。スコッチやジャパニーズと比べて、やや情報量が少ないバーボンですが、実は溢れるほどのブランドがリリースされています。今回その数多いブランドの中でも、アメリカ最大規模の家族経営を行っているヘヴン・ヒル社のウイスキーブランドに焦点を当て、彼らのサクセスストーリーも踏まえてバーボンについて楽しんでいきましょう。ぜひ、バーボンの世界へ足を1歩踏み出してみてはいかがですか?
2月のお届け内容を見る
バーボン・ウイスキー(Bourbon Whiskey)はアメリカ合衆国ケンタッキー州で主に生産されているウイスキー(アメリカン・ウイスキー)です。一般的に「バーボン」と呼ばれています。
ケンタッキー州はアメリカ合衆国の中東部に位置する。首都はフランクフォート(Frankfort) 人口は450万人程 カーネル・ハーランド・サンダースさんがフライドチキンの販売を始めたのもこの州だ。
ケンタッキー州の首都フランクフォートの近隣には多くの蒸溜所やビジターセンターが存在する。ヘヴンヒルの場合は首都から南西に位置するバーズタウンに位置している。
起源には諸説ありますが、アメリカ合衆国で最初にバーボン・ウイスキーを作ったとされるのがジョージ・ソープという人物です。
彼は、ヴァージニア州の沼沢地にあるバークレー農園に住んでいた時期があり、その頃にその土地で育成されていた穀物のトウモロコシを使い、蒸留酒をつくるアイデアを持っていました。
この土地では1621年、ビールやアクア・ヴィテ(一種の蒸留酒で、未熟成もの)が飲用されており、彼も同様に蒸溜をしたと言われています。
そこから、時は過ぎ、本格的なウイスキー造りが始まったと言われているのは、蒸溜技術をもった“スコッチ・アイリッシュ”が1717年前後からアイルランド共和国や北アイルランドからアメリカの南北カロライナ両州とペンシルベニア州に植民してきたことがきっかけです。
彼らが西部の未開拓地に移動し、そこでとの土地の穀物を使ってウイスキーを作り始めました。そして彼らとその子孫は小規模蒸溜家として農業を営みながら、余った穀物を蒸留して生活をしていました。
19世紀のペンシルベニア州、植民はアメリカ東部から始まり、西部に移住していく
西部はとうもろこしが豊富でこれがバーボンの主原料となった
その中で、1892年に歴史家のルーベン・ダーレットが「1783年にエヴァン・ウイリアムズがケンタッキー州の最初の蒸溜業者になった」と記述しています。
エヴァン・ウイリアムズは、ケンタッキー州のルイヴィルで、ライムストーン(石灰岩)から湧き出る水を発見しトウモロコシを原料としてウイスキーを造ったとされています。
その後、アメリカ合衆国発足の1789年、エライジャ・クレイグ牧師が「焦がしたオーク樽でバーボンを熟成させる」ことを考案したと言われています。宣教師で開拓使であったエライジャ・クレイグ牧師は、樽を再利用とした際に炭化した内側の部分がウイスキーに独特の香りを与えてくれることを偶然に発見したそうです。
*ここまで登場した人物が起源であるという確たる記録は残っておらず、あくまでここまでは伝承です。
エヴァンウイリアムズの名前を冠したバーボン
バーボンの語源はフランスの「ブルボン(Bourbon)朝」が由来です。
アメリカ独立戦争の際にアメリカ側に味方したことで、トーマス・ジェファーソン(後のアメリカ合衆国大統領で、ウイスキー税を廃止し、発展を支えた人物)がケンタッキー州の郡の一つに「バーボン郡」と名付けました。
その郡で生産されるウイスキーの名前をバーボン・ウイスキーと人々は呼び、徐々に定着していきました。1812年にはケンタッキー州で2000の蒸溜所が登録されおり、ウイスキーを製造する一大拠点として成長を遂げています。
しかしながら、バーボンと切り離すことができないのが、禁酒法でしょう。
1920年から1933年まで続いたこの法律によって長年世界的なウイスキーのシェアを誇っていたアイリッシュウイスキー産業は没落の一途をたどり、隣国カナダで生産されるカナディアンウイスキーは大量に密造されアメリカ合衆国での地位を確立し、多くのアメリカ人が国境を越え、酒を購入しました。
例えば、カリブに位置していたバカルディのラム酒はその典型で、アメリカの富裕層は飛行機を使ってラム酒を飲みにキューバに渡りました。そして、この時期に3000以上存在したアメリカ合衆国の蒸溜酒製造者は一気に消滅しました。禁酒法後の時代はバーボン生産者にとってみると長期熟成のウイスキーをリリースることは困難の時代となったのです。
また、アメリカ国民も飲みやすいスコッチやカクテルベースとしても有用なカナディアンウイスキーを愛好する結果となり、バーボンは労働者=男の飲み物としてスタートせざる得ない状況となったのです。アメリカではカティーサークやデュワーズ、カナディアンクラブがシェアを拡大させました。
1923年のワシントンDCでの取り締まり
密造酒を飲んで運転していた人物の車が逮捕される場面、1922年ワシントンDC
1970年代にはアメリカはアメリカンブレンデッドウイスキーというカテゴリ―によってライトで飲みやすいウイスキーを販売していました。
しかしながら、更に洗練され飲みやすいスコッチには太刀打ちが出来ずカテゴリーゴリーも消失していきます。1990年代前半までアメリカのウイスキーづくりは10か所程の蒸溜所と小規模生産者に委ねられ厳しい時代が続いていきます。
しかしながら、90年代後半以降バーボンのリバイバルや熟成年数の長いアイテムのリリースによって徐々に消費数量は増加していき2010年にはカナディアンウイスキーを上回る売り上げを達成し、様々な蒸溜所から多彩なブランドが発売されるようになりました。
現在、クラフトブームもありアメリカには600以上の蒸溜所が存在していますが、13の大規模蒸溜所(工場)が約95%のバーボン・ウイスキーのシェアを誇っています。まさにアメリカン・ウイスキーは大手とクラフトが共存する新しフェーズに入っています。
バーンハイム蒸溜所(ヘヴン・ヒル)
バッファロートレース蒸溜所
バーボン・ウイスキーの製法について・・・
バーボンは51%以上をトウモロコシを主原料とし、他にライ麦・小麦・大麦などが原料に使用されます。
この際の原料構成比率をマッシュビル(Mashbill)を呼びます。一般的にトウモロコシをは甘味、ライ麦は辛口でスパイシー、小麦はすっきりとした甘さをもたらします。これらをブランド毎にバランスよく組み合わせて、麦芽を使って糖化、更に酵母を加えてアルコール発酵させ、連続式蒸溜器あるいはポットスチルでアルコールを80%以下になるように蒸溜を行います。
バーボンウイスキーの製造で特徴的な一つとして、サワー・マッシュ法があります。
前回蒸溜の際に生じた蒸溜残液の上澄みを、次の糖化の際に、トウモロコシなどの仕込み水に25%ほど加えます。このことによって、糖化条件が改善し、酵母の栄養が補給され、フレーバーが向上し雑菌等の繁殖を抑える作用があります。
最後にそこで生まれた原酒を62.5%以下に加水調整し、内側を焦がしたホワイトオークの新樽に詰めて熟成を行います。
ケンタッキー州でのウイスキー製造において使用される仕込み水をライムストーン(石灰岩)ウォーターと呼ばれます。石灰石は炭酸カルシウムを50%以上含んでいる蓄積岩で、これによって濾過される水は、鉄分が少なくカルシウムが多い硬水です。カルシウムは発酵において酵母を活性化させる効果があるので、まさにウイスキーに適した水を使用してるといえるでしょう。
とうもろこしを糖化させる
ケンタッキー州 レキシントンのレイヴン川 「ライムストーンウォーター」が流れる
蒸溜においては、使用する連続式蒸溜器はアルコール度数が高くなりやすいので、このアルコール度数を80%以下で蒸溜する蒸溜技術が必要となりますのでここが腕の見せ所。
また、主原料の割合を変えることで味わいが変化するため、1つの蒸留所でも多くのブランドを生み出すことができます。アメリカ合衆国、ケンタッキー州は夏が暑いので熟成はスコッチよりも早く進みます。
熟成年数表記は法律では規定されていませんが、4年未満の場合はラベルに熟成年数を表示することが義務となっていますし、長期熟成の場合はあえてラベルに記載するブランドもあります。瓶詰はアルコール度数40%以上、最終的には4~5年物の熟成原酒を使用する蒸溜所が多いと思います。
瓶詰されたバーボン・ウイスキーのラベルを見ると、ある程度そのウイスキーの情報が分かります。
例えば、2年以上熟成されたものは「ストレート・バーボン」と表記されています。
また、通常複数の樽をブレンドしますが、1つのみでリリースされる場合は「シングル・バレル・バーボン」
複数の樽でも限られた樽の数のみでブレンドしたものを「スモール・バッチ・バーボン」を呼ばれています。
また、今回ご紹介するリッテンハウス ボトルド・イン・ボンド(Bottled In Bond)のように、1897年に発令したボトルド・イン・ボンド法に基づく製法をあえて目指したウイスキーもリバイバルされています。まずはヘヴン・ヒル社の販売するバーボン・ウイスキーからそれぞれの特徴をテイスティングしていきましょう。
*ボトルド・イン・ボンド法
1つの蒸溜所で1年の内、1シーズンだけ蒸溜した原酒を樽詰め。熟成を政府監督の保税倉庫で4年以上熟成しアルコール度数を50%で瓶詰したウイスキーに対して「ボトルド・イン・ボンド」「ボンデッド」とラベルに表記することができます。背景としてはこの法律が出来た1897年は粗悪品が大量に出回っていたので政府主導で「まともな」ウイスキーを定義づけする必要がありました。
代表的なバーボンブランド、これらすべてに「ケンタッキー・ストレート・バーボン」と記載されている
「ヘヴン・ヒル社について」
元々、ヘブン・ヒル社はケンタッキー州バーズタウンにあるヘヴンヒル・スプリング蒸溜所として1935年にシャピラー夫妻と投資家によって設立されました。
ヘヴン・ヒルはこの土地を所有していていたウイリアム・ヘヴンヒルさんから名付けられました。1935年12月13日に最初に原酒が流れ出し、4年後に、最初のウイスキーを「ヘヴンヒル ボドルド・イン・ボンド」を発売します。
その後、1937年シャピラー夫妻が2万ドルでこの蒸留所を買収、以後、シャピラー一家が家族経営でこのビジネスに取り組んでいくことになります。
製造についてはジム・ビームでお馴染みのビーム一家が製造を担っています。
当初からジョーとハリー・ビームが品質の基準を選定し、1946年にはアール・ビームをヘヴン・ヒル蒸溜所のマスターディスティラーとして迎え、彼はその後、29年間その職を全うしました。
彼の技術力によってヘヴンヒル ボトルドインボンドはケンタッキー州で最大の売り上げを誇るようになりました。1975年に彼の引退後、息子のパーカー・ビームが引継ぎ、エライジャ・クレイグ、エヴァン・ウイリアムズ、ヘンリー・マッケンナなどの新ブランドを立ち上げプレミアム・レンジのバーボン市場を牽引、ヘヴン・ヒルは名実ともにトップブランドの仲間入りを果たしました。
「火災その後の復活」
しかしながら、1996年11月日、寒冷前線がケンタッキー州を暴風雨で襲い、熟成庫(リックハウス)を直撃しました。最終的にヘヴン・ヒル蒸溜所と7つの熟成庫が燃えてしまいました。
約92,000樽のウイスキーと施設の損失は3000万ドル(日本円で約35億円)。幸いなことに、1935年から何世代にも受け継がれてきた最初の製造に使われた酵母は冷えたまま、冷蔵庫に保管されていました。
その年に社長に就任していたマックス・シャピラーは瓶詰ラインを次の日には稼働させ、他の蒸溜所に対してヘヴン・ヒルの製造に協力を打診、徐々に復活に向けて動き出します。
1999年、自社での製造を復活させるべくUD社(現ディアジオ)が所有していたバーンハイム蒸溜所を購入そこで、パーカー・ビームはウイスキーから硫黄臭を取り除くのに必要な銅製の蒸溜器を新たに加えるなど設備を充実させ、バーズタウン時代の約3倍の量を製造する蒸溜所として改修、翌年には稼働をスタート。
その後、2007年には年間20万樽の生産量となり、2014年には4基の発酵槽を増加、年間30万樽の生産量まで増加し、現在は3基目となる70フィートの連続式蒸溜器と4つの発酵槽が新たに敷設され、年間40万樽まで製造が可能となっています。
2016年には56,000樽収容可能な、コックス・クリーク・バレル・リザーブという最新の消火システムを備えた熟成庫を建設。
ヘヴン・ヒル社はバーンハイム蒸溜所という新しい蒸溜所を手に入れ、ウイスキーブームの中、世界最大級の蒸溜所を今も家族経営で続けています。
スペック:アルコール度数40%・容量700ml
ジョン・ハミルトンは「独立戦争直前の1774年に、レッド・リカーを初めて蒸留したと人」と言われています。
「レッド・リカー=赤い酒」は最初に誕生したバーボン原酒ということで蒸溜したウイスキーを焼いたオーク樽の中に放置していたところ赤みを帯びていたという伝承から、ライトでドライな味わいでありながら、独特な個性を持ち、パワフルな味わいに仕上がっています。
ジョンハミルトンの味わいの特徴はこちらから
スペック:アルコール度数:43% 容量:750ml
1957年に初リリース。エヴァン・ウイリアムズは、*世界第2位の販売量を誇るケンタッキー ストレート バーボンです。
1783年にケンタッキー州ルイヴィルで、ライムストーン(石灰岩)から湧き出る水を発見し、最初にトウモロコシを原料としたウイスキーを造ったとされる人物、エヴァン・ウィリアムスにちなんで名前がつけられています。
約4年熟成で、これぞ王道バーボンと押すバーボンドリンカーも多く世界的な評価を得ています。その要因としては、2013年にエヴァン・ウイリアムズ・バーボン・エクスペリエンスをオープンさせ多くの観光客が訪れています。名実ともにトップブランドの一つとなりました。
マッシュビル: とうもころこし78%,ライ麦 10%,大麦麦芽 12% MALTED BARLEY
*2020年1~12月販売量において(IWSR社調べ)
味わいの特徴はこちらから
スペック:アルコール度数47% 容量700ml
1968年にこのブランドが初めて誕生した。
ケンタッキー開拓時代のプロテスタント、バプティスト派の聖職者エライジャ・クレイグ牧師にちなんで名付けられたバーボン。濃厚なブラウンシュガーの甘美な味わいが特徴のバーボン。エライジャ・クレイグは、長年12年熟成のリリースで評判が高かったが、火災のため原酒が枯渇、現在は8年~12年をブレンドしたスモールバッチとしてリリースされている。12年の方がよりコクが強いため、味わいの傾向が異なる。
マッシュビル: トウモロコシ 78%,ライ麦 10%,大麦麦芽 12%
味わいの特徴はこちらから
~RITTENHOUSE RYE BOTTLED IN BOND~
スペック:アルコール度数 50% 容量 750ml
ボトルド・イン・ボンドは1897年、アメリカで当時出回っていた粗悪品から消費者を守るために、ボトルド・イン・ボンド法という連邦法が発令された際に生まれた規格です。
ボトルド・イン・ボンドを表記できる条件として一年に一季節のみ蒸留所で蒸留し、政府監督の保税倉庫で最低4年以上熟成され、100プルーフ(50度)で瓶詰めされたウイスキーです。
リッテンハウスはアメリカンウイスキーを愛好するお客様に熱い支持を受けている、クラシックなライ・ウイスキー。リバイバルしたブランドとして今やアメリカ中で親しまれており、歴史あるライ・ウイスキーとしての地位を確立しています。特にマンハッタンなどのライウイスキーベースを中心としたカクテルとしての人気が高くエレガントながらもライ麦の香ばしいニュアンスを充分に伝えてくれます。
マッシュビル:ライ麦 51%,とうもころこし 35 % ,大麦麦芽 14% MALTED BARLEY
味わいの特徴はこちらから
スペック:アルコール度数 43.3% 容量 750ml
1995年に初登場。バーボンとしては貴重なヴィンテージ表記。そして樽詰めした日までも記載されている、唯一のバーボン。
ウイスキー・ジャーナル誌において、3年連続ウイスキー・オブ・ザ・イヤーに輝くだけでなく、発売されたすべてのヴィンテージが、数々の賞を獲得。テイスティングアイテムは2013年蒸溜となります
マッシュビル: とうもころこし78%,ライ麦 10% RYE,大麦麦芽 12%
*写真は2000年蒸溜
味わいの特徴はこちらから
スペック:アルコール度数 45% 容量700ml
2000年にヘヴンヒル蒸溜所が「バーンハイム・オリジナル」を発売し、その後、この小麦を主原料としたウィートウイスキーを2005年にリリース。こちらも珍しい小麦(ウィート)が主原料の“ケンタッキー・ストレート・ウィート・ウィスキー”。
マスターディスティラーのパーカー・ビーム氏と息子のクレイグ・ビーム氏が発酵からボトリングに至るまで注意深く見守り続けた逸品。スモールバッチでボトリングされ、フルボディながらも、小麦が主原料なので柔らかく上品な味わい、一度はテイスティングして欲しい。
MASH BILL: 51% WHEAT, 37% CORN, 12% MALTED BARLEY
味わいの特徴はこちらから
* プラスプラン、アドバンスプランのみ
**アドバンスプランのみ
スタンダード・プランのサンプルは50ml、プラス&アドバンスプランのアイテムは20ml
定額で毎月テーマに沿ったウイスキーボックスを送料無料でお手元にお届けします。いつでも入会・退会自由です。
・毎月サンプルボトルを4本お届け
・初月にウイスキーノート&マップをお届け
3,980円/月(税込)
・毎月サンプルボトルを5本お届け
・初月にウイスキーノートをお届け
5,500円/月(税込)
・毎月サンプルボトルを6本お届け
・初月にウイスキーノートをお届け
6,500円/月(税込)
TOP
©DRAMS JAPAN ALL RIGHTS RESERVED