ザ・ウイスキー・スタジオの9月の特集は世界的な評価を高める長濱蒸溜所。滋賀県長浜市に位置し、2016年11月より稼働した、同蒸溜所のブレンダー、屋久佑輔氏にユニークな製造方法と、ブレンデッドモルトウイスキー「AMAGAHAN(アマハガン)」や今後の事業展開についてお聞きしました。
ウイスキーの味わいはザ・ウイスキー・スタジオにて9月中旬に動画形式にて公開予定。アランビック型蒸溜器で作られる、ここでしか生まれない「一醸一樽」のウイスキーをお楽しみください。
日本一小さい蒸溜器から、世界へ
ザ・ウイスキー・スタジオの9月の特集は世界的な評価を高める長濱蒸溜所。滋賀県長浜市に位置し、2016年11月より稼働した、同蒸溜所のブレンダー、屋久佑輔氏にユニークな製造方法と、ブレンデッドモルトウイスキー「AMAGAHAN(アマハガン)」や今後の事業展開についてお聞きしました。
ウイスキーの味わいはザ・ウイスキー・スタジオにて9月中旬に動画形式にて公開予定。アランビック型蒸溜器で作られる、ここでしか生まれない「一醸一樽」のウイスキーをお楽しみください。
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長濱蒸溜所は元々、株式会社 長浜浪漫ビールとして、1996年にクラフトビールの製造所として同地に事業を始めたのがその起源となる。現在は、滋賀県を中心に関西圏のビール好きの方に愛され、そのクラフトビールと食事を楽しむレストランも併設されている。その後、満を持して2016年にウイスキー事業をスタート、この5年間でニューポットのリリース、ブレンデッドモルトウイスキーのAMAHAGAN(アマハガン)は世界的な賞を受賞。2020年5月には自社モルト原酒を使用したシングルモルトもリリースされ、日本のクラフト・ウイスキーのシーンを牽引する存在となっている。
今回はウイスキー事業初期から従事する、AMAGAHANのブレンドを担当する屋久氏にこの蒸溜所を案内頂いた。
「麦汁を得るという目的ではビール製造とウイスキー製造はほぼ同じ。」と、屋久さん。「もちろん使用麦芽も違いますし細かい部分は異なりますが、ウイスキーに馴染みの無い方にはそうやって説明しています。」 屋久さんは元々バーテンダー出身で、見学に来るお客様に分かりやすい説明を心掛けている。
入り口の正面にアランビック型蒸留器が見える
ご案内頂いたのはブレンダーの屋久佑輔さん
「製造の工程としては最初になる麦芽の粉砕と発酵を2階で実施しています。1回分の1袋25kg×16袋の麦芽をハンガリー製のローラーミルで粉砕していきます。」
「一般的に、麦芽を粉砕する場合、ハスク・グリッツ・フラワー(殻・粗挽き・粉)を2:7:1の割合で粉砕します。長濱蒸溜所の場合、最初はそうしていましたが、今は0:10:0で100%の粗挽きになります。その方が、当蒸溜所の設備ですと糖化効率が良くなりますので、糖分の取れ高も高まります。粉砕された麦芽は下の糖化槽に運ばれ糖化されます。」 「長濱蒸溜所のウイスキーの仕込みは、1回分で400kgの麦芽を使用します。そこから糖化を行い、麦汁を生成し72時間、発酵させてアルコール8%のもろみが生まれます。この時の1回のもろみの量が約1900Lになります。」
ハンガリー製のモルト・ミル(粉砕機)
1000Lの糖化槽
「ご覧の通り、糖化槽は1000Lサイズで小さいため、粉砕麦芽そのものを活用した濾過・挽き分けをする必要がないのです。糖化槽4枚の濾過版の網目が荒いので、モルティな風味が残ります。綺麗に澄んだ麦汁を取ることはできるのですが、あえて、モルティな味わいを引き出したいと考えています。その麦汁は隣のケトルに運ばれます。」
「糖化の際に残った、麦芽の搾りカスのドラフは地元の農家さんへ提供され、ネギなどの野菜の肥料となり、そのサラダは店舗内に併設されているレストランでの提供という循環型を目指しています。」と屋久さん。
まさに地産地消とはこのことだ。
麦汁は隣のケトルに運ばれる
麦芽の搾りカス(ドラフ)は地元の農作物の飼料として使用することができる
「糖化槽のパイプはラインが繋がっていて、2階の発酵タンクに運ばれます。全部で6基の発酵槽内、4基はウイスキー、2基をビール用として基本的に使用しています。もちろんピーテッド麦芽の場合はその香りが続くと、ビールは仕込めないので、季節や麦芽の種類によっても使用するタンクは異なります。発酵タンクでは72時間、8.1%のアルコール度数のもろみを作っていきます。どの発酵タンクに現在何が作られているのかを確認することが一日の仕事の最初の工程です。」
「仕込み水についてですが、この湖北地域は日本酒の蔵が多いように、水に大変恵まれています。目の前の川では5・6月には蛍が舞っていますし、魚もたくさん見ることができます。このエリアの良質な水はビール造りだけではなくウイスキー造りにおいても大きな恩恵を受けています。」
1階から見える発酵槽、ビールと併用している
階段のボードにはその日の進捗状況が明記されている
「ここには蒸溜器が3つあります。右側と真ん中が初溜釜、左が再溜釜です。それぞれ1000Lの容量なので1回のもろみを2基の初溜釜で蒸溜することができます。この2つの初溜釜の合計の初溜液は600L程でアルコール度数は22%くらいになります。それを左の再溜釜で蒸溜します。最終的に約200Lのニュースピリッツが1回の仕込みで生まれます。私達はポルトガル製のアランビック型蒸溜器を使っています。毎日蒸溜を行っているので、ちょうど今、ニュースピリッツが出ています。」
「アランビック型蒸溜器にした理由は何だったのでしょうか。」と橋本。
「2016年4月にスコットランドのクラフト蒸溜所二か所で研修をしました。そこでは、我々と同様にビールとウイスキーを製造していて、そこで使っていたのがアランビック型蒸溜器でした。アランビック型蒸溜器における液体の還流は非常に複雑です。また、液体に触れる面積を増やすために、蒸溜器のボディもよく見ると細かく打ち付けているのが分かります。ここでは、スピリッツレシーバーは20Lしか貯まらないので、大きいレシーバーに順次移していく原始的な作業なのですが、生まれてくる原酒の味わいに原始的な荒々しさはありません。」
「一番右が初期の蒸溜器です。元々1000Lの初溜器と500Lの再溜器で稼働させていました。2017年末に1000Lを2基導入して現在3基となっています。冷却はシェル&チューブ式です。スチルルームは8坪しかないので日本で一番小さいスチルルームになります」
3基備える蒸溜器
2基の初溜釜
蒸溜の際の、ミドルカットは決まった時間ではなく、ノージング・蒸溜スピード、液温など複合的な要素を判断しながら、進めている。そのニュースピリッツを樽に入れる場所は、併設されているレストランの入り口。まさに目の前で樽の中に原酒が詰められているので、タイミングが合えば食事をしながらつぶさにその工程を見ることができる。
「熟成庫はどこにあるのでしょうか?」
「熟成庫は使わなくなったトンネルを使用しています。1週間に2回、ここで樽詰めしたウイスキーを移動させています。クーパリッジもいずれ自社で目指していきたいと思っていますし、我々は大手ウイスキーメーカーではないので、色々とトライをしていきたいと思っています。例えば、ここにある樽は、長濱浪漫ビール熟成というコンセプトとして、アメリカンウイスキーのKOVAL蒸溜所のカスクによって熟成されています。」
ニュースピリッツが流れ出している
ノージングする屋久ブレンダー
店舗入り口で原酒は樽に詰められる
原酒のチェックをする屋久ブレンダー
ここからは、当蒸溜所の代表取締役社長である伊藤 啓さんと引き続き屋久さんに熟成庫を案内していただいた。
長浜浪漫ビールは、長浜市の私有財産を有効活用するために、七尾小学校跡地を無償貸付先として選定された。将来的にはこの地で蒸溜から、貯蔵、出荷を目指している。地域名を冠したウイスキーや、オール長浜産の原料を使用したウイスキーのリリースなども検討している。当日は地元の子供たちが野球をグラウンドで練習していた。地元に密着した将来的な事業をここでご紹介したい。
旧校舎は約2000㎡で、ウイスキーの貯蔵をメインとして、活用が決まった。
「長濱蒸溜所では、ウイスキー熟成樽だけではなく、ウイスキーのボトリングライン、海外から買い付けた空き樽や、オーナーズカスクの熟成管理などの様々な理由で広い敷地が必要でした。その中で、地元の七尾小学校跡地を活用させて頂く機会に恵まれ、ウイスキーの貯蔵用施設として有効活用するべく、改修を行っています。」と伊藤氏
「将来的に熟成庫として広大な敷地になりますね。」
「公開はまだ先になりますが、ご自分のウイスキーを作る蒸溜体験ツアーやブレンド体験セミナーなどにも活用できるのではないかと思っています。」
「学校には理科室もあったので、白衣を着ながらブレンド体験は想像するだけで楽しそうですね。」
様々な種類の樽が搬入されている状態だったが、代表の橋本はその中から、ポートカスクフィニッシュのシングルモルトをテイスティング。過熟されていないポート甘味と長濱蒸溜所のノンピート麦芽のモルティさが重なり合った美酒だ。
「長浜は夏は暑く、冬は雪が降るくらい寒暖差がありますので、数年の熟成ではありますが、納得のいく仕上がりになってきています。ここから美味しいウイスキーをお届けできるはずです」
この他にも、ワインカスクやミズナラカスクなど、AMAHAGANで使用されるであろうカスクも拝見することができた。
七尾小学校跡地の入り口
原酒のコンディションを確認する伊藤社長と屋久ブレンダー
長浜市内にある、全長300mに及ぶ旧国道のトンネル。長濱蒸溜所のウイスキー原酒は現在ここで熟成されている。当日は暑い気温にもかかわらず、このトンネルに近づくと伊吹山から流れる冷風が、ウイスキーの香りとと共に運ばれてきた。滋賀県のバックアップで借り受け、ダンネージ式の熟成庫として使用している。目の前の高台からは琵琶湖が見渡せて、熟成庫としては、最高の場所に位置している。最近では日本を代表するロックミュージシャン、吉井和哉氏が自らの人生を投影させたウイスキー「YAZŪKA (ヤズーカ) World Whisky」の原酒がこの場所で熟成されていた。
「ご覧の通り、長濱蒸溜所には熟成庫がないので、このトンネルを熟成庫として活用しています。今日は暑い一日ですが、近くに来るとやはり森の香りと涼しい空気が気持ちいいですね。」と伊藤氏。
直線の300メートルあるトンネルの入り口にはNAGAHAMA AGING CELLERと書かれている。入り口に立つと反対のトンネルの入り口に位置する伊吹山から風が流れ続ける。当日の気温とは打って変わって、ここだけは静かな時の中で、ウイスキーの香りが漂い続けていた。
長濱エイジング・セラー
長濱エイジングセラーから、その日は快晴だった
屋久さんに長濱蒸溜所で造られるウイスキーの特徴についてお伺いした。
「AMAHAGANは長濱蒸溜所の原酒と海外原酒を使用しています。我々は海外原酒を使用していることをネガティブにとらえるのではなく、海外原酒の良さと長濱蒸溜所の原酒の良さを引き出したウイスキーを生み出したいと思っています。そのため、パッケージにも英語を多用しています。その点、シングルモルトのリリースは「長濱」としています。」
「お陰様で、多くのウイスキードリンカーに飲んで頂ける機会があり、毎日仕込みをさせて頂いております。一回の仕込みで生まれる原酒が約200Lなので一樽分です。「一醸一樽」というポリシーでスタッフ一同、美味しいウイスキーを作るために頑張っていますので、ぜひお楽しみいただければ幸いでございます。」
一見、コンパクトに見えても、製造方法や、ポットスチル、多様なカスクから生まれる味わいは奥深い。世界的な評価も得てますます注目されるクラフト蒸溜所になるだろう。
売店入り口 下の樽はKOVALの樽で熟成中
社長の伊藤氏(左)とブレンダーの屋久氏
ニューメイクは樽で熟成される前のウイスキー原酒です。ややスモーキーな麦芽を使用することで、モルティーな風味と、程よく香るスモーキーさをお楽しみ頂けます。
ニューメイクは樽で熟成される前のウイスキー原酒です。スモーキーな麦芽を使用することで、モルティーな風味と、しっかり香るスモーキーさをお楽しみ頂けます。
長濱蒸溜所 INAZUMA(イナズマ) ワールド ブレンデッドモルト ウイスキー 「エクストラ セレクテッド」 700ml 47% 長濱蒸溜所で蒸溜したノンピートモルト原酒と、三郎丸蒸留所で蒸溜し たピ ーテ ッドモルト原酒に、そして海外産モルト原酒を加えた” エクストラ ”な味わいを目指して作られてたウイスキー
※蒸溜所見学をご希望の方は、下記urlよりご予約下さい
* 新型コロナウイルスの影響により、営業時間・定休日などが変更となっております。ご来店時には必ず事前に直接店舗へご連絡をお願いいたします。
メンバーの方に限定でお届けする、市販されていないサンプルボトルです
メンバーの方に限定でお届けする、市販されていないサンプルボトルです
* プラスプラン、アドバンスプランのみ
**アドバンスプランのみ
スタンダードプラン・プラスプランは各サンプル50ml・アドバンスプランは20mlの容量となります
定額で毎月テーマに沿ったウイスキーボックスを送料無料でお手元にお届けします。いつでも入会・退会自由です。
・毎月サンプルボトルを4本お届け
・初月にウイスキーノートをお届け
3,980円/月(税込)
・毎月サンプルボトルを5本お届け
・初月にウイスキーノートをお届け
5,500円/月(税込)
・毎月サンプルボトルを6本お届け
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